長い間、エゾジカの生存は北方四島では確認されていなかった。これが近年、国後島での生息していることがわかった。国後島は閉鎖された小さな「島」のため、一気に植物の生態系が破壊されてしまう恐れがある。北海道では激増したエゾシカの食害が深刻化しているが、増えすぎたエゾシカが流氷に乗り国後島に渡ったのではないか、との見方もある。
北海道はすでに「島」へのエゾシカ流入による被害を経験している。
洞爺湖中島(4・85平方キロ)では1957~65年に観光業者が3頭(雄1頭、雌2頭)を導入した結果、個体数が約400頭まで激増。森林や草原が丸裸にされ、餓死も相次ぎ個体群の崩壊が起きた。
また、エゾシカ増加を食い止めるのも現在は厳しい状況だ。ニホンオオカミがいなくなった今、食物連鎖としてエゾシカを「食べる」のは人間しかいない。つまり人間が何もしなければ、増える一方だ。
だが、昨年の事故を背景に、北海道猟友会が行った狩猟の「自粛」、本年度は国有林、道有林とも主要な猟場の8割近くを国と道が「狩猟立入禁止」としている。本年度も狩猟による個体数調整は難しいだろう。
80年代、道東でのエゾシカ激増を受けて国後島などで計5頭が漂着した記録がある。その際は、「弱っていたので食べた」とされ、その後目撃されることがなかった。
「小さな国後島ではひとたび急増すると、植生の破壊が一気に進みかねない」と北海道大学助教は話している。
0コメント