動物園のライオンに駆除の個体を餌として与えるというアイデア

画像出典:大牟田市動物園


動物園の肉食動物は自然でないものを食べている

動物園の肉食動物というのは、普段飼育された馬などの肉を与えられています。

本来の肉食動物というのは、誰もが知っているようにまず獲物を追い、ねじ伏せ、骨や皮を食いちぎるのが本来のスタイル。すでに切られた肉だけを食べるというのは、やはり本来の生体とは違います。

これは、本来の動物の生態を見せるという動物園の趣旨ともやはり異なるもですし、これ自体がストレスとなって異常行動をとる個体が出ることも。すでにアメリカでは、餌に動物を加工せずそのまま与える「屠体給餌」の手法をとっており、飼育動物の環境を自然界に近くすることを「環境エンリッチメント」と呼んでいるそうです。


有害鳥獣の問題と同時に解決

日本では、有害鳥獣による食害問題が深刻で、駆除を行ってもその残滓処理もまた大きなコストをかけて行っています。

ここで、新しい試みとして、有害鳥獣駆除で捕獲された個体をライオンの餌として与えることを福岡県にある大牟田市動物園が試験的に行っており、一石二鳥で両者の問題が同時に解決できる一つの方法として注目されています。

ただ、何も問題がないわけではありません。
やはり野生動物なので、寄生虫、病原体などを持っている可能性があり、衛生的に安全であるとは言えません。たとえばマダニが寄生していることもあるほか、E型肝炎ウイルス、重傷熱性血小板減少症候群ウイルスなどが飼育動物に感染してしまうリスクは否めません。
これの対策としては、まず駆除個体の頭を落とし内臓を抜いた状態で冷凍し、低温殺菌処理(63℃、30分)を行っているそうです。


また、見学者は、鹿などが食いちぎられる姿を見ることになるので、抵抗がある人もいることでしょう。こちらは、事前に見学者へ向けてていねいな解説と対話を行うことにしており、本来の野生動物が普段どのようなものを餌として食べているのか、現在問題になっている食害の話、駆除残滓の問題などを丁寧に説明し、これらの問題を一度に解決できる一つの方法だ、と紹介した上で給餌を実施するそうです。

ここでのアンケートによると、抵抗を感じたのは約一割いたものの、ほとんどの人は自然に近い形である事に肯定的だったとのことです。



画像出展:ワイルド・ミート・ズー

この研究に参画したメンバーが立ち上げたのが「ワイルド・ミート・ズー」という団体があります。

我々猟友会としても、有害鳥獣の有効利用というのは一つの課題であり、未だ明確な答えは出ていません。その中では幸い、旭川には旭山動物園があります。こういった取り組みも一つのアイデアとして検討してみるのも良いのかもしれません。




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